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ついに上場するLINEはなぜ功労者にしょっぱいのか?

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先週の大きなニュースのひとつとして騒がれた“四度目の正直”になるLINE上場観測。ただ「実際に上場が決まるまでが話題の旬」という目もあり、特に有価証券報告書などでこれまで不透明だった経営内部について言及されるとにわかに先行き曇空な感じがしてきます。

実際に上場後にどう動くかは通常のIPOでも市場の動向を見ないとどうとも言えないわけですが、さらに今回はNYでの同時上場というおまけ付き。ちなみに、LINEの時価総額6000億円とほぼ同規模のコナミHDですが、こちらも実は2002年から米ADR市場で上場していたものの去年4月に自主的に上場を廃止しています。

  

damonge.com

コナミHDの公式発表の通りに受け取るなら「日米同時上場を維持する経済的合理性が低下した」そうなのですが、実態としては取引高が日本(一応ロンドンでも上場している)と比べてあまりにも少ないので、メリットが無いということでしょう。

LINEもその意味ではめぼしいメリットは正直感じられないと思います。日本市場自体が海外マネーに趨勢を握られている状態なわけですし、機関投資家レベルがわざわざ出来高の低いADR株で取引する必要は低いと見られそうです。上場することがアメリカでのLINE普及の足がかりになるのかも疑問ではあります。たとえば中国で圧倒的なシェアのあるアリババが日本市場に上場したとして、日本国内でAmazonを使う人がアリババで通販するようになるわけではないですよね。Amazonが日本で普及した時もそうですがすでに競合が幅を利かせている業種では、サービスとプロモーションにすさまじい投資をしてはじめてシェア争いに参加できると思います。

もちろん個人の投資判断では、アメリカ上場が日本に先行する形になるので活用するメリットはあるかもしれません。

 

markethack.net

ぶっちゃけ日本でのLINE株の初値は、直近のアップバンクやグノシーなどの「知名度先行型IPO」の例を見ればわかるようにかなりの上値追い、ともすれば数日ストップ高という状況も考えられるためドル建てADR株で持っておくのは正しいように思えます。

日本では値幅制限で取引が行えない状態は一種の「行列効果」を生むため人気銘柄の証と言われますが、理論的には「市場取引ができない=その時間分の価値変動を無駄にしている」んですから、殺到している買い手に売れないという“機会損失”でもあるわけです(もちろん“その逆”もあります)。この埋め合わせと思えば、値幅制限の無い米国市場での上場も一部は納得です。

 

さてそこで気になるのは、この上場自体がいわゆるイグジット、つまりはIPOゴール」であるかということです。この部分いろいろ意見があるとは思うのですが、個人的には「韓国NAVER側と日本経営陣とでは目論見がかなり違うのでは?」という疑問があります。

 

headlines.yahoo.co.jp

ある程度は予測されていたと思うのですが、LINE社内における株式配分にかなりの不均衡、言ってしまえば韓国優遇の状況があるというのが今回のIPOで特に注目された点です。これに比べれば利益面でのマイナスは、成長幅こそ限られるもののまだ上向く目は十分あると見ている人も多いでしょう。

あまり“お国柄”のようなものを判断に加えるのは危険と思うのですが、いちおう現実として「韓国企業の日本企業への警戒心」そして「韓国国内での企業統治低下による問題の多発」などは確実にあります。直近ではロッテグループに代表されるお家騒動や経営権に対する敵対的行為などが横行しているとも報じられてます。日本で欧米企業型の経営を取り入れた成長ベンチャーでは、株式でも非常に高い取り分を経営陣が得ていることが多い様ですがLINEはその真逆の状態。およそ全ての決定権は韓国側に握られているわけです。日本側の経営陣がどんな目論見をもっていようと、できることと言えば0.1%にも満たない所持株を売るか持つか(そして会社を去るかどうか)というくらいです。

どうしてそんなことになっているのか?というのは、二年前の上場観測が立ち消えになったことも大きなヒントかと思います。ここにどんなやり取りがあったのかは知るよしもありませんが、韓国側が当時最高潮と思われた調達額を捨ててまで保守的に上場を先送りした背景に、“日本側への一種の疑心暗鬼”が生まれそれが今でも後を引いているようにも見えてしまいます。しかも今回は180日のロックアップ期間付きの上場となり、本当に「売られること」に対しては過剰なほどの防御をしています。

つまり韓国NAVERとしては、今のところ毛ほども売るつもりがないのではないかと見ています。米国同時上場も“浮動株比率における一極集中の可能性を下げる”という視点で見ると、残りの部分も納得できるように思えます。

その判断がはたして「LINEの今後の成長性を見込んで」なのか、それとも「韓国企業としてのプライド」に由来するのか、そこはわからないのですが少なくとも数字上はっきりとした日本経営陣への“不信”がある以上、そういう仕打ちに晒されている日本国内での普及に努めてきたLINE従業員のモチベーションたるやいかに…とは思いますね。

前任の森川社長が去ったことも関係しているのかもしれませんが、ひょっとするとLINEの今後についてもっともリスクを感じなければならないのは、フェイスブックやワッツアップと競えるかどうかというより、内側の事情によるところかも知れません。